見習い兵士イグナイの場合 【第7話】

  【第7話】異国の剣士/双刀の流儀

 天武の槍裁きは、少々変わっている。棒術に近いかもしれない。
 得物の間合いの差はほぼ無かった。だが、それはまだ荒けづりである。
 ご先祖様との修行に比べれば踊りをおどっているようなものだった。
 だが、時折見せる意表を突いた攻撃には、光るものがある。
 その性根が腐っていなければまず化ける可能性はあると思われた。
 天武はまだ気をうしなったまま倒れている。

イグナイ  「流花殿いかがか?この者センスには光るものがある。
       見様見真似で得た技なのかもしれぬ。
       型の意味を理解すれば、飛躍するやもしれぬぞ」

流花    「ふむイグナイ様が、そうおっしゃられるのなら共にに加えるに異論は
       ございません。
       傾奇者の武芸者風情にしては、才覚は確かに認めても良いでしょう」

イグナイ  「これから、船での旅になるがこの物我々の目的を話してみよう。
       起こしてあげなさい。」

 流花はおもむろにまた、天武のみぞおちを踏みつけた。
 ゴボッと唸りを上げ、天武が、目を見開いた。

天武    「あちゃ・・また一本取られたようでござるな・・
       約束では一本取りでござった。
       一応若君様が、手を抜かれたとはいえ取りもうしたぞ!ぜひ!
       お供におねがいでござる。
       正直これほどの腕前の方々にお目にかかるのは、
       万に一もございません。」

流花    「イグナイ様の意向は、是じゃ。付いてこれるなら共することは許そう!
       しかし、我々がどこに向かっておるのか知らないであろう? 
       なまなかではいくまいて」

天武    「おおっありがたき幸せ!でどちらに行かれるのでござろう?」

流花    「直江津より、船に乗り「欧羅巴」という場所までじゃ。
       並みのもなら想像もつかないほどの長旅だぞ?
       本気でついてこれるのか?」

天武    「なんと!聞いたこともない場所でござるな。
       この国からも出てしまおうというのか!
       想像もつきませんが、大冒険にはちがいない!
       これも天のお導き!ぜひ共連れに!」

イグナイと流花は、目くばせして詳細に、この旅の目的を説明した。
天武には理解できていないようだが、
物遊山ではないことだけは、覚悟したようだった。

イグナイ  「流花殿さて、これからの道程を詳細に聞かせてくれないか?」


流花    「はい!少々荒事は避けられない手で参ります。
       直江津から対馬までは、北前船で用心棒の武芸者として乗り込みます。
       そこから先は、廻船では到達できない故、対馬から先は、南蛮船
       の奴隷商人の船を、見つけ奴隷として乗り込み、台湾に向かう途中で、
       占拠いたします。
       ですので確かに人手は必要ではございます。力技故、
       猛者でなければ成し遂げえないでしょう。
       私と御剣老子の二人で使った手でございます。
       イグナイ様であれば成し遂げられましょう!
       それと直江津では水先案内人である異国のものを雇います。
       南蛮船を乗っ取ったときに操舵を任せえるものが必要ですので、
       とある酒家に手落ちあう手はずでございます。」

イグナイ  「ふむ、かなり行き当たりばったりなのだな・・まあ良い!天武よ!
       いかがする?正直正気の沙汰とは思えないような話だ」

天武    「いあああ何たる豪気な旅でござるなw海賊の真似事をするとは!
       武芸者の修行としては願ってもない。
       胸躍る大冒険の予感が、致しますなW」

イグナイ  「では参ろう!」

 一行は旅先案内人を訪ねて直江津へと歩き始めた。

 直江津は、活気のある港町だった。
 南蛮渡来の品を商う露店などもあり大変結構なものである。
 繁華街は混沌としているが、良く警護されており、多くの人々でにぎわっていた。
 つい長居してしまいたくなるほど、楽しい街並みだった。
 繁華街の通りを抜けるとひときわ豪壮な店構えの明風の酒家に辿り着いた。
 流花は、裏口へと進み仲介者と話を付け、裏手から広い道場のような、
 場所に案内された。そこにいたのは、異国の騎士のような鎧を付けた若き戦士が、
 たたずんでいた。
 青い髪に、浅黒い肌、まだ若いようだったが、そのただ住まいには隙がない。
 その若者はサイモンといった。インドの出で、西欧の海賊船の一団の頭目だったのだ
 という。日本には種子島を大量に売りさばくため来たのだという。
 
サイモン 「ようこそ!わが隠れ家へ!ワタシは、サイモンといいますです。ハイ。
      さて早速ではありますが
      イグナイ殿のその腕前、みせていただきますです。ハイ!」
 
 そういうと異国の騎士は、鋭い眼光で剣を抜き放ち、我が前に立ちはだかった!
 この時代ではこれがあいさつ代わりらしい。
 ただならぬ闘気を感じた俺は、長刀の束に手をかけた。

コメント

人気の投稿