見習い兵士 イグナイの場合 【5話】

【第5話】旅は道連れ世は情け

  流花の体術に戸惑いはしたものの、得物の差は否めない。 
ご先祖様との修行の成果もあり、何とか組み伏せたのだった。
これで少しは実力を認めてもらえただろうか?
ここから先は彼女の協力を取り付けなければ、いかんともしがたい。
俺にはこの世界を歩くための地理的知識などないのだから。
 

流花  「参りました」

幸村  「でどうだろう?旅の共連れとしては、認めて頂けるのだろうか?」

流花  「豪放なその剣技感服いたしました。なにせ時代は混沌としておりますゆえ、
     生きるのにも力いるのでございます。」

幸村  「ほっほっほ 初めて観る忍びの技にあれだけ対応できれば、問題なかろうよ。
     御剣老子の元まで辿り着くくらいはたやすい」

流花  「内から溢れる力しかと見せて頂きました。御剣老子とも劣らないほどの豪気。
     その質は聖なるものでごさいましょう。」
    「忍びの技は、邪道、闇の属性 相反する力でございますゆえ、
     極めれば人ではなくなります。我が業さほど深くありませぬ。」

イグナイ「ではここからは、流花殿の導きにしたがいましょう!」

幸村  「流花よ。わが子孫の道案内しかと務めよ!その者の事 
                     我と思いよく仕えるのだぞ」

流花  「はっしかと賜わりました。このお役目必ず全ういたしましょう!
     大陸まで必ず御剣老子に引き合わせましょう」

イグナイ「ご先祖様!お世話になりました。
     必ず生きて戻り、旅の話をお聞かせいたします。」

幸村  「旅立つのは、明日でよかろう!
     今宵はしばしの別れおしみ酒宴を催そうではないか!」

 
 こうして、ご先祖様と酒を酌み交わし、この戦国の世の作法などを聞かせてもいながら
 夜は更けていった。
 

  旅立ちの朝 ご先祖様と飲み比べをしたせいで二日酔い気味ではあるが、
  これからの道中を思うと心が躍る。
  この時代の士族の旅支度をし、ご先祖様に見送られ出立した。
  流花どのは、男装の麗人となり、我が徒弟として振舞った。
  山を下りるのは、街道より忍び道を隠密でいく方がはやい。
  山伝いに木々を飛び越え麓に降り立つ。目の前には海が開けた。
  街道にでたところで、元の徒弟の風の衣装に着替え、直江津港へと向かう。
  流花の手配した北前船に乗り込むためだ。
  道中腹ごしらえのため団子やに立ち寄った。

イグナイ 「あとどの位で港であろうな?」

流花   「あと5里といった道程ですね。昼すぎには到着するでしょう。」

 たわいもない会話していると、旅の武芸者が、一人我々の方に向かってくる。
 どうも槍使いのようだ。

旅の武芸者「ほほう随分と長い刀をお持ちでござるな!
      業物と見た!それを賭け一つ死合ってみんかね?」

イグナイ 「断れるといえば?ひきさがってくれるのか?」

旅の武芸者「まあ断れば力ずくで頂くだけだがね。
      かなりの使い手なのでござろう!
      ここでさがればおんしの武がすたりはせんかな?」

流花   「無礼であろう。控えよ。もしどうしても立ち去らぬのなら、
      我が主のでるまでもない!」

旅の武芸者「まあよい!まずは従者を下し血祭りにしその長刀いうただくとしよう!」

 そういうと、槍使いは身構えた。
 やれやれだ、茶屋で追いはぎの類に出くわすとは嘆かわしい。
 ここは見守るしかないようだ。

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