見習い兵士 イグナイの場合 【第2話】

第2話 「ご先祖様に聞け!」

あれは何だったのだろうか。恐ろしく凶悪な自分とうり二つの容姿を持つ男との死闘の末
俺は、肉体を取り戻したようだった。あの光から発せられた清涼たる声の導きは、本当だったようだ。
体に己の意思が伝達されて、心臓が激しく脈打ちはじめた。
少しずつ意識が戻り始めているのを感じた。
そして目が開けた。自分の手を体を確かめる。これは何故!最後に見た情景。レーザー銃の弾痕も手で確かめる限り
なくなっているようだ。意識がもうろうとしている。冷静に周りを見渡すと、そこは雪山だった。
いい朝日だ。
(生きている。俺は生きているのか?そしてなぜか長年苦しめた偏頭痛と悪夢のイメージから開放されたような?)
装備はあの時のままだった。生まれ変わるというよりそのまま別世界に、放り出されたような感覚。

そこに不意に後ろから話しかけられた。どこかで聞いたような声だった。

幸村  「ようやく目覚めたか。わが子孫は存外愚図なようだ・・」

イグナイ「ああ。あなたは?子孫とはどういう事なのですか?」

幸村  「まあ、召喚式の直後で認識できていないだろうが、
     ここは、1585年の日本という国よ。下剋上の世界だ。嘆かわしい事よ」

イグナイ「日本なのか・・1585年・・戦国時代だな。
     俺も日本で生まれた。西暦は。2035年」

幸村  「ほほう!わが子孫はそんな先まで生き延びていたのか・・
     この世で子もなさず人質生活のまま終わるんではないのだの」

イグナイ「人質なのか・・?自由に見えるが・・」

幸村  「まあ捕虜ではないからの・・上杉領の霊験あらたかな霊山の麓よ。
     わがいとこに御剣と申す者がおる。少し頭のおかしい御仁でな・・」

イグナイ「御剣??随分と御大層なお名前ですね・剣士なのですか?」

幸村  「そうじゃが、少し変わっておる御仁での。
     種子島という飛び道具があるんだが・・ 
     それを剣で調伏しようと変わったことをしている・・」
    「この里からでられぬ。わしをおもんばかってか。
     ちょくちょく顔出し世界の話をしてくれるんだが・・」
    「まあ腕は立つ。わしの剣術の師でもあるからの・・
     なかなかのもののふなのじゃが・
     下剋上のこの世には興味なく強くなる方法を探っておっての」
    「どうやらどこかの霊山の口寄せでの、己の子孫に「そうるえっじ」の使い手と
     なるものが、しかも最強になりうる適性のものが生まれる聞いたらしくての」

イグナイ「・・・なんのことやら・・この状況すら飲み込めてないのですが・・
     あなたが私のご先祖と?」

幸村  「そうじゃ。風体はよくにておろう・なかなかの美丈夫である。ゴホン。」

イグナイ「でこの世界で私に何をさせようと??」

幸村  「ふむ。御剣老子の話では、そちは腕を磨き「そうるえっじ」
     とやらの力を習得してその力の源泉を探ってほしいそうじゃ」

イグナイ「・・・まだ何も考えれるほどで意識ははっきりしませんが・・
     まあやることがある事は良い気なぐさめになるかもしれません・・」

幸村  「ほう。この突飛のない話すぐ飲み込むとは大したものよ。
     さすがわが子孫。そこでだまあちょいと、目覚ましがてらお主の力のほどを
     みさせてくれんかの」

イグナイ「・・やはり戦いの螺旋からは、解放されるわけでは二のですね・・
     いいでしょう 御剣流とやら一手ご教授願います。」

こうしてこの世界での第一歩を俺は歩き出した。

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